ウェブ会議 比較で気分を変えよう
成長が止まってしまっているのは、単なるプラ卜ーなのだ。
プラトーから脱出するためには、「テコ」があればいい。
そしてその「テコ」は、ビジネスモデルを完全に変えてしまったり、安易な価格競争を仕掛けたりすることではなく、外部の新たな血を導入し、新鮮な空気を会社の中に注ぎ込むことなのである。
しかし現実には、経営メンバーのような存在をまったく信用せず、「オレの会社のことは、オレ自身が決めるんだ!」とすべての権限を社長に集中させ、なんでも自分で決めてしまう経営者が非常に多い。
性悪説といっては言い過ぎかもしれないが、仲間や部下をまったく信用せず、大事なことは全部ひとりでやってしまうために、会社の経営の重要な部分がすべてブラックボックス化してしまうのだ。
従業員には重要な情報はいっさい知らされておらず、社長がいなくなると会社はたちどころに行き詰まってしまう。
私が以前に見聞きした、あるサービス関連会社のケ−スを紹介した。
「私はこれから会社の環境を作ることに遁進したい」と社長が宣言し、自分は会長職に退いたのは良かったものの、役員クラスの人材が育っていなかったため、あっという間に業績が悪化してしまったという話である。
社長が退かなくても、結果は同じである。
創業してから何年か経つと、最初は輝いて見えた経営者の能力も壁にぶつかってしまい、業績は伸びなくなる。
そういう悪いケ−スがベンチャー業界には少なくない。
もうひとつ、例を挙げてみよう。
私の知っているあるIT系ベンチャー企業のオーナー社長は、典型的なワンマンだった。
二十歳そこそこの若さで創業し、会社を引っ張ってきた。
アイデアは豊富で、ビジョンメイキングの能力も高かった。
その意味では、とても優秀な経営者だったのだろう。
ところがこの社長は、実務はまったくダメだった。
カネの計算がまったくできない。
自分自身のコントロールもできない人だった。
売上よりも多くの経費を使ってしまって会社を赤字にしてしまったり、突然ひとりで海外に出かけてしまい、重要な案件がたくさんあるのに連絡がまったく取れなくなってしまったこともある。
投資や融資の相談に金融機関に行っても、まともな商談ひとつできないような有様だったという。
さすがに社員たちの間からも、「こんな状態じゃ仕事はできない」と強い不満の声が上がるようになり、役員たちは取締役会で、「あなたは社長に向いていない。
実務がまるでダメじゃないか」と社長を追及した。
社長は社長で、「実務なんか君たちがやればいい。
ビジョンメイキングがオレの仕事だ」と抵抗した。
実務ではなくビジョンを作るのが経営者であるというこの社長の言い分は、一般論としては正しい。
しかしあまりにずさんな仕事ぶりに対する非難は激しく、社長はとうとう取締役会で解任されてしまったのである。
社長は退陣し、新たな社長が就任した。
この新社長もかなり若い人だった。
解任劇からしばらく経ち、私はこの新社長に会う機会があった。
しかし新社長はあまり浮かない顔をしている。
聞いてみると、前社長への不満が口をついて出た。
「驚いたことに、前社長からの引き継ぎがまったくなかったんですよ。
社長に就任することになってあいさつにいったら、『後は頼む』という書き置きだけが残されていて、まったく出社しなくなっていたんです。
経営にどこからどう手を付けていいのかさえまったくわからず、最初は本当に途方に暮れました」ある意味、どこか欠落した経営者だったのだろう。
この前社長は、本人の言う通り、たしかにものすごい発想を持っている人物ではあった。
その意味で卓越した経営センスを持っていたとも言えるかもしれない。
そして彼の問題は、決して実務能力がゼロだったことではない。
最大の問題は、きちんと人材を育てなかったことなのである。
自分で実務を行う能力がないのであれば、実務能力に長けた人物を採用し、経営メンバーとして育てればいい。
ところが彼はそうした努力をしなかったために、社長がいないと何ひとつ回っていかない会社にしてしまい、そして最後は解任される羽目になってしまったのである。
社長がなんでも自分で決めようとするとろくなことはない、というのがわかっていただけただろうか。
そんな状態を続ければ、会社はいずれ必然的に傾いてしまうのである。
優秀な人材を集め、経営メンバーとして適材適所に配置していくというのは非常に難しく、実行に移すのはもちろん簡単なことではないが、こうしたことを行っていかなければ、会社の持続的な成長は望めない。
そうやって経営メンバーを集めたとして、では経営者は何をすればいいのだろうか。
現場で旗を振って、みんなの先頭に立って営業活動に精進する。
そうした「現場の親方」ふうの仕事が、社長の役割だと思っている経営者もいる。
たしかに創業当時は仲間も少なく、社長みずからが陣頭指揮に立って現場に出なければならないことが多い。
優秀な営業マンから転身して起業家になった場合などでは、ますます「自分が営業しなくて誰がやる」と思う人は多くなるだろう。
また技術志向の会社では、経営者がR&D(研究開発)部門に龍もりっきりで、新製品の開発に余念がないというようなケ−スもあるだろう。
だが社長がいつまでも現場に張り付き、営業の第一線に出たり、研究開発に没頭しているようでは、会社の成長は望めない。
そうした実務の仕事は、できるだけ経営メンバーに権限譲渡して任せておく方が良い。
では経営者の仕事は何なのだろうか。
会社の規模が大きくなって、優秀な経営チ−ムも育成されて権限委譲もうまくいくようになってきた場合、権限を部下に渡してしまった社長は何をすればいいのだろうか。
答えは簡単だ。
社長の最大の役割は、会社が五年後、十年後にどのような姿になっていくべきかを考え、そのために舵を取っていくこと。
長期戦略のさらに上を行くビジョンを作り出すという意味で、「ビジョンメイキング」という言葉の方が適切かもしれない。
会社のビジョンを考え、そのビジョンに基づいて人材をどのように配置し、各事業をどう展開していくのかという大きな青写真を描いていくのである。
そして第二に、経営メンバーが事業をうまく軌道に乗せられなかったり、業務改善に失敗したとき、最終的な責任を負うこと。
現場の経営は経営メンバーに任せ、しかし失敗の責任はみずからが負うというのが、経営者の役割である。
だから社長と経営メンバーは、お互いのコミットメント(責任範囲)を明確にしておくことが大切だ。
「僕がここまでやりますから、お願いします」「社長の権限はここまでだから、後は君に一任するよ。
頼むぞ」といったように、お互いの分担を事前に決めておいて、後から変にこじれないようにしておく必要がある。
前章でもしつこく指摘したが、社長がいつまでも現場に口を出し続けると、ろくな結果にはならない。
社長は自社の仕事を長期的な戦略から怖搬的な視点で見ているもので、現場のスタッフの視点とは異なっている。
目線の位置が違うのである。
社長が上からの視点で、「どうしてそんなにのんびり仕事をしているんだ?一刻も早く新事業を立ち上げなければいけない大切な時期なのに、どういうことだ?」と怒るだけでは社員はついて行かない。
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